清宮選手の骨折【有鉤骨骨折】について
こんばんは。
清宮選手が骨折というニュースが目に入ったので、記事を読んでみました。
有鉤骨骨折ですね。
記事では
清宮選手は最近グリップエンドを太くした
と書かれていました。
そして、ファールを打った際に苦悶の表情を浮かべてそのままベンチに下がったと書かれています。
おそらく、グリップエンドを太くした事により、日々の練習で有鉤骨の「鉤」に繰り返しの外力がかかり、疲労骨折がベースに出来上がった上に、ファールを打った際に完全骨折をしたのでしょう。
野球選手やゴルフをされる方・テニスをされる方などによくあるパターンです。
この「有鉤骨骨折」なかなかやっかいで見逃してしまう事が多い骨折です。
(私も整形外科勤務時代に一度見逃してしまったことがあります。。。。)
見逃してしまう理由としては
- 有鉤骨の「鉤」はレントゲンの正面像・側面像では見えにくい
- 痛みがそんなに強くないので本人も折れているとは思わない
というところでしょうか。
まずレントゲンですが、有鉤骨の「鉤」は手根管撮影という撮影法で撮影しないときれいに見えません。
↑こんな撮影方法です。
↑こんな像が撮影できます。
矢印の先が有鉤骨の鉤です、
通常の手関節の撮影のルーティンには入っていませんので、有鉤骨骨折を疑わないとなかなかこの方法で撮影することはありません。
次に、「痛み」ですが、さすがに今回の清宮選手のように完全骨折を起こすと結構痛いのですが、疲労骨折の段階では痛みはそんなに強くありません。
「最近、なんか手首の尺側が痛いなぁ・・・」
ぐらいの感じです。
そして、ここからが本題です。
私達の最大の仕事は「ケガを治すこと」ではなく、
「ケガを予防すること」
です。
今回の清宮選手の有鉤骨骨折は防ぐ事はできなかったのか??
(あくまで疲労骨折がベースにあっての完全骨折という仮定で)
今回のように有鉤骨骨折の完全骨折を起こす前に疲労骨折の段階で見つけることが重要です。
有鉤骨の疲労骨折を見つけるポイントはズバリ
『圧痛』
です。
もう少し詳しく言うと
『有鉤骨の【鉤】のピンポイントの圧痛』
です。
私が主催する「柔道整復師の為の外傷セミナー」で、受講生のみなさんに何度も何度もお伝えするのが
『圧痛はウソをつかない』
という事です。
圧痛があるという事は
『そこで何かが起きている』
という事です。
野球やテニスやゴルフなどグリップを握って行うスポーツをされている方が
手首の手掌側の尺側の痛みを訴えられた場合、
この有鉤骨骨折を疑い、
しっかり同部の圧痛を取れるかどうか?
これができるだけで、有鉤骨の疲労骨折は完全骨折を起こす前に発見できます。
という事で、
有鉤骨の『鉤』の触診です。
掌側の手関節横紋の尺側の少し上に『豆状骨』を触れることができます。
これはとても分かりやすいので誰でも触知することができると思います。
そして、有鉤骨の『鉤』はこの豆状骨のナナメ上(遠位橈側)1.5センチくらいのところにあります。
そして、有鉤骨は豆状骨よりも深いところにありますので、豆状骨のナナメ上の奥の方を探っていくと、有鉤骨の鉤を触知できると思います。
そして、この有鉤骨の鉤を触知できたら、すこし骨にストレスをかける感じでグッと押し込んで圧痛をとります。
それで、患者さんが
「あ、それ痛いです」
とイヤそうな表情をしたら有鉤骨の疲労骨折の疑いが強いので、すぐに練習を中止して、手のケガに詳しい整形外科へ送った方がいいです。(この段階での正確な診断にはMRIが必要になるので、MRIのある整形外科へ送った方がいいと思います)
清宮くんの場合がどうだったは知りませんが、
有鉤骨の鉤骨折はほとんどの場合が、疲労骨折がベースにあったうえで、ある時外力がかかって完全骨折というパターンがほとんどです。
疲労骨折がベースに無い、新鮮な完全骨折の場合は保存療法も可能ですが、疲労骨折がベースにある完全骨折は保存療法では骨癒合は期待できず、オペをすることがほとんどです。
疲労骨折の段階で発見してあげると、練習中止だけで治癒させてあげる事ができます。
なので、疲労骨折の段階で私たちがしっかりと発見をしてあげる事が重要なのです。
ポイントは
●まず、有鉤骨の疲労骨折かも?と頭に浮かぶかどうか?
●そして、圧痛をしっかりとることができるか?
これだけの事なんです。
それだけで、完全骨折を防ぐことができるという事ですね。
まずは、誰かの手で、触診してみましょう!
***
でも、清宮くんは何故グリップエンドを太くしたんでしょうね?
スイングのスピードが上がってきてバッドのすっぽ抜け防止ですかね?
それならば、グリップエンドを太くするのではなく、握力を鍛えた方がよかったのかもしれませんね。
あと、テニスや野球やゴルフをされる患者さんには、
グリップエンドをこの部分に当てないように握る指導もこの有鉤骨骨折の予防になりますよ。
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“清宮選手の骨折【有鉤骨骨折】について” への3件の返信
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塩川 徹(しおかわ とおる)
しおかわ鍼灸接骨治療院院長
http://www.honekun.com
- 趣味
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- プッシュ中のアーティスト
- 尾崎裕哉・藤原さくら・森恵
- 週末の楽しみ
- 土曜日の診療が終われば、まずは王将に行って餃子2人前とビール
はじめまして、宜しくお願いいたします。
有鉤骨の疲労骨折はエコーではチェックできないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
完全骨折をしてしまえばエコーでも観察可能ですが、疲労骨折の段階では骨内の病変だけなのでエコーでは判断はつかないと思います。
エコーは超音波の跳ね返りを見ているだけなので、エコーで骨を観察する場合も骨の表面のことしか観察不能です。
脛骨の疲労骨折などは仮骨が形成されてくると骨膜が肥厚しますので、エコーでも診れないことはありませんが、有鉤骨の疲労骨折の場合は骨膜の肥厚はおこらず、骨内病変だけなので。。。
エコーで観察しなくても、記事にあるようにしっかりと圧痛が取れれば、十分に判別できると思います。
MRIでは、骨内の状態を見れるので確定診断が可能です。
ご回答ありがとうございました。
大変勉強になりました。
今後も勉強させていただきますので、宜しくお願いいたします。